2011年1月12日水曜日

“Baby Tree”の話 1  



イレーナとのディスカッションは
毎日、すごく刺激的です。

稽古が終ると、
夕食を一緒に食べながら
いろんな話をします。

一昨晩、私は
密教のお行をした時の体験を話しました。

自分に起こった物語は、感情が伴うので
カタコトの英語でもすごく伝わります。
とくに、彼女はとってもカンがよく、
きっと価値観が似ているのでピピピっと
言いたい事が伝わります。


そのお行は、不眠不休の7日間の断食行でした。1999年のことです。
12月、真冬で雪のちらつく山頂。密教の荒行で有名な、ある山に籠ってのお行です。
まさに、天狗さんのような装束を着て、真冬の山に入りました。

お堂にも入れてもらえず、筵ひとつだけもらい、般若心経を読むか、法剣の行をするかの日々。
寝ない、食べない。水だけ飲んでいいのです。
しかし、水は、山の中腹の泉である赤水を汲みに行かねばならないので、体力がどんどん低下するので
1日コップ二杯ぐらいにおさえておかなければ、わざわざ険しい山を下らなければなりません。
そして、最後の日である7日目の昼間に、山をひとまわり歩くのです。
これが、行のクライマックスへの階段で、本当に辛かった…。

何か祓いたい(家族との不和、病気など)場合は、山を左巻きに登り。
心願成就を叶えたい場合は、山を右巻きに昇ります。

私は、辛く空腹で寒く厳しい、その行の最終段階の山道を右巻きで歩きました。
桜月流美剱道の発展という心願成就があったからです。

最初の頃は空腹で空腹で、死んじゃうんじゃないかと思えて来ます。
そして、だいたい3日目ぐらいになると
「何でこんな行をしているんだろう」という考えがぐるぐるとまわります。
5日目、空腹より寒さ。そして、正座もあぐらも痛くて。
お経を読む姿勢は倒れ込むようになり、法剣の稽古は、力もなくふらふらな状態になりました。

その夜。月はほとんど見えないような、新月手前の細い有明の月です。
雪の中、深夜に唱えるお経の声は、もうでなくなってきます。

6日目の昼…。昼間は太陽が出てくれさえすれば、本当に暖かいのです。
太陽は本当に全ての生みの母だ!という思いでいっぱいになります。

しかし、もう身体は限界。私はお経を読みながら…戒めを破り
もう倒れ込むような伏すような姿勢でお経をたどたどしく読み上げていました。

すると、天から声が聞こえたのです!

「姿勢を正せ!」 

はっきり、そう言われた気がしました。
私は、ものすごくハッとして…、畏れ、ただ静かに姿勢を正しました。

すると、どうでしょう。

あれだけ、身体のあちこちが痛かったのに、
急にすーっと天と地とに結ばれて自分がまっすぐになりました。
そして、全ての痛みが消え、私はすーっとストレートに天と繋がり真っ直ぐになりました。

そして、7日目。
いよいよ、山をひとまわりして来なければならない、最後の難関が私に迫っていました。
私は、夕方になる前には戻って来なければ危険なので、まだ早いうちに
山の御廻りを開始したのでした…。


長くなりました。
続きは、明日にしますね。
こんな話をイレーナはまっすぐな瞳で、頷きながら、吐息のような声で相づちをしながら
私の話を聞いてくれます。


では、続きは明日。




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