ひとり女性サーファーが海に入ってゆくところでした。
曇っていて。
下弦の月はまだ、西の空にありましたが、ほとんど光もありません。
ぼうっとしているところがあるだけです。
目が慣れてくれば、ただ空は灰色に白く、海岸は真っ暗で。
江ノ島の灯台明かりが、時々ひゅんと細く通り過ぎるだけです。
ウエットスーツは、黒地に
黄色なのかピンクなのか何か薄そうな色が配色されているようです。
ボードも…濃い色ではない何がしかの色のようです。
潮風はわりと穏やかですが、波は白く跳ねてぶつかって
少し荒れているように見えました。
女性サーファーだとわかったのは
ほんの私の近くを通り過ぎて海へ向かったからです。
真っ暗な海へ、曇った空の下、進んでゆく彼女の勇敢さに驚きました。
私は彼女が海に入ってゆくをずっと見ていました。
でも、普段より引き潮で、海が遠くて。
あれよあれよという間に、私は彼女を見失いました。
日の出にはまだまだ時間がありました。
完全なるモノクロの世界。
私には色が見えませんでした。
ゲーテが色は光だと言った言葉がようやくわかりました。
光がないと…それを見ることができても色はない…
白と黒 モノクロの世界なのです。
彼女のスーツの色も、ボードも、白のようなものにしか見えない。
黒か白か、黒に近い白か、白に近い黒か、それだけ。
それだけなんです!
光が色を見せてくれるんだ。
もし、少しでも太陽が登ってくれば、
この世界はすぐに色を取り戻すでしょう。
でも、光がなければ、色がないのです!!
世界は、色の時間とモノクロ時間に分けられていたんですね。
電灯の夜に慣れ過ぎて…忘れていました。
モノクロの世界から、色の世界に変わる時は…神秘の瞬間ですね。


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